絶望的なマスコミの財政評論

 衆議院選挙を前に、マスコミが各政党の経済政策を報道しています。しかし、その内容はとても日本の未来を見据えたものとは言えません。

与野党、財源論置き去り 経済政策「分配」競い合い

この記事を少し引用すると『与野党は衆院選(19日公示、31日投開票)の経済政策で、現金給付や減税など「分配」を競い合う。ただ、その裏付けとなる財源の議論は事実上置き去りのままだ。』

財源は国債。税は財源ではない。

【裏付けとなる財源は国債。終わり。】でいいのです。

 これだけでいいのですが、この記事では『こうした施策の財源は、国の借金である国債となる見通しだ。』と書かれていて、貨幣観については完全に誤ったままです。

 昨日日曜日には、NHKの日曜討論で、各政党の幹部が討論を行っていました。

 そこでも貨幣観を正しく認識している幹部はほとんどいません。国債発行とは新たな通貨発行であり、税を取るという行為は、国が発行した通貨を国が回収する行為である、という実際の通貨の誕生と税の役割を理解している政治家は大政党の幹部にはいないことが明らかになっています。

税は財源ではない、ということについてはここで説明しています。

 しかし、それでも、いまはコロナ禍なので財政支出は拡大すべきだ、ということでは各政党一致しています。

とにかくいまは財政支出拡大して国民を救済すること

 したがって、いま必要なことは、「コロナ禍だから」という理由付けでも構わないので、とにかく財政支出拡大をして、日本経済を立て直すことです。

 貨幣観の誤りや、税の本当の役割を理解するのは、その後でも構わない。

 とにかく今は財政支出を拡大して経済的に疲弊する国民を救済するのに全力を注ぐこと。

それに水を差すのが日本のマスコミ

 しかし、それに思い切り水を差そうとしているのが、貨幣観と課税の役割について誤った考え方に基づいたマスコミの報道ぶりです。

 まさにこれは日本の国益を害しています。少なくとも、いまは疲弊する国民を救済するために財政支出を拡大するべきだ、と主張するマスコミはいないのでしょうか。日本のマスコミは、なぜこれほどまでにステレオタイプなのでしょうか。

一社くらいはまともな貨幣観を持つマスコミはいないのか

 とても不思議でなりません。一社ぐらいは正しい貨幣観や税の認識を持つ社があってもよさそうなものです。それが持てないことは非常に残念だし、日本にとっても不幸なことです。

そんな中で、いよいよ明日から衆議院選挙が始まります。このようなマスコミの報道の中で、有権者は正しい判断をしなくてはなりません。いかに自ら正しい情報を得て投票行動を行うことができるか。本当に個々人の高い情報リテラシーが求められます。

あんどう 裕(ひろし)

慶應義塾大学経済学部卒、大手鉄道会社入社。平成9年税理士試験合格。平成10年独立し安藤裕税理士事務所を開設。平成24年12月衆議院議員総選挙により初当選。以後3期連続当選。議員連盟「 #日本の未来を考える勉強会 」前会長。税理士。

View Comments

  • 既存のマスコミは"臆病"なんですよ。
    インテリの言葉を並べることしか出来ない。
    裏を返せば、庶民との「交わり」が無いんでしょうね。そうした臆病が国民に伝播してしまうのです。

    批評の神様と言われた小林秀雄の講演動画にもありますが、イデオロギーにしがみつくのは無責任とイコールですよ!

    • 小林秀雄 講演 なぜ徒党を組むのか
    https://m.youtube.com/watch?v=U9Qnaox2UAo

    結局、虚無主義者のメンタリティって、新自由主義だろうが共産主義だろうが構わない、固定的なイデオロギーに腰を降ろし、「これしがみついていれば何とかなる。怖いもの無し」と"安心"する。

    そして、勤勉に働けば社会的認知が永久に得られると"勘違い"する。

    しかし、それが間違っていた事に気づいたとしても、それで飯を食い家族を養ってしまったから、否定されていると思い込んでしまう。

    イデオロギーの恐ろしさですよ。
    まぁ恐ろしいですね。

    • 本当に、イデオロギーはいつの間にか蔓延しています。そして引き返せなくなる。恐ろしいですね。

  •  9党の党首会談を聞いたのですが、財源は国債で良い、と言いきったのは、れいわ新撰組の山本代表だけでした。国民の玉木代表もかなり近いが、まだ税にこだわっているし、他の党首はコロナの緊急事態だから国債という条件付きで、後で税で返してもらう式の話でしたね。正しい貨幣感は山本代表だけで、山本代表の、正しい貨幣感を持っていただきたい、との発言にも、暖簾に腕押しのような・・・。世のリーダーからしてこの有様ですから、あとは推して知るべしですね。嗚呼。
     10/18読売朝刊の「気流」欄に「財務事務次官の指摘同感」という主婦の投書が採り上げられていました。これは、読売新聞がそのように思っているから採用されたわけで、財務事務次官は更迭ものだと考えている者から見ると、非常に残念というか、絶望的というか、切歯扼腕の気持ち頻りです。

    • 貨幣観は、学校でも誤った認識を教えていますから、正していくのはものすごく大変です。
      一歩一歩ですね。でも以前に比べればかなり進んできましたよ。

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