本当の意味の「若い世代への付け回し」が表面化

 和歌山で水道橋が落下し、上下水道に支障が出ています。

水道橋が破損し、紀の川に落下 和歌山市北部6万世帯で断水へ

和歌山だけではなく、全国の水道は危機的状況にある

 水道が使えなくなるという、恐れていた事態が現実になりました。水道に対するメンテナンスは全国で必要なのですが、全く進んでいません。

最近の水道行政の動向について – 厚生労働省

 この資料でもわかるとおり、今後20年内に更新が必要とされる水道管は全体の23%にも上ります。

 これを20年かけて更新していくには、毎年1.14%の水道管を更新していかなくてはなりませんが、実際の更新率は0.75%(平成28年度)しかなく、耐用年数が過ぎても使用される水道管が出てくることになります。

メンテナンスが必要にもかかわらず、水道職員は3割削減された

 また、水道職員は削減され、ピーク時に比べて3割減少しています。

 このように、予算がなく、人員も削減されれば、当然メンテナンスに支障が出てきます。日頃からの点検整備をやりたくても人員不足で点検ができず、仮に不都合な個所が見つかったとしても、緊急の部分を除き、予算がないという理由で修繕は後回しにされているのです。水の安定供給はかなり危機的状況にあります。

 これが、いよいよ和歌山で水道管が落下し断水になるという事態として表面化してしまいました。これも、長年の緊縮財政によるものです。

 水道事業は、一応独立採算制ということになっていますが、水道需要が減れば、当然事業としては成り立たなくなります。

水道事業には地方自治体の財政支援が不可欠

 そのような水道事業には、地方自治体が財政的に支援をしなくてはなりませんが、地方自治体も財政難なので十分な支援ができません。

 支援ができないまま放置されているので、このような事態になるのはいわば必然なのです。

 このまま放置しておけば、20年後には日本国民は水道ではなく、井戸まで水を汲みにいかなくてはならない状態になるかもしれません。実際に、和歌山の人たちはしばらく水道が使えない不便な生活を余儀なくされるのです。

水道が使えなくなることこそが本当の意味での「若い世代への付け回し」

 これが、本当の意味での、後世の日本人に付け回しをする、ということです。

 政府の借金が若い世代への付け回しなのではありません。投資を怠り、不便な社会を残し、先進国から発展途上国としての日本を残すことこそが、若い世代への付け回しなのです。

 これを回避するには、地方自治体に国から十分な財政支援を行い、水道事業だけではなく道路や橋、トンネルなどのインフラ整備ができるだけの予算を地方自治体が確保できるようにすることです。

 地方自治体に十分な予算を付けるだけで、地方には仕事が生まれ、インフラが安定するので安心して暮らすことができるようになるのです。

 岸田新内閣は本日発足します。このような事態を今後招かないためにも、財政規律を取り払い、プライマリーバランス黒字化目標を凍結し、必要なところに十分な投資がされるような予算措置が行われることを切に希望しています。

あんどう 裕(ひろし)

慶應義塾大学経済学部卒、大手鉄道会社入社。平成9年税理士試験合格。平成10年独立し安藤裕税理士事務所を開設。平成24年12月衆議院議員総選挙により初当選。以後3期連続当選。議員連盟「 #日本の未来を考える勉強会 」前会長。税理士。

View Comments

  • 安藤先生のおっしゃる通りです!
    しかし今朝のワイドショーでも相変わらず
    財源はどうすんだ。、無責任だなどとほざいて
    おりました、このような無責任マスコミ対策はどうすれば良いですかね🤔🤔

    • 相変わらずですね。どうしたらいいんでしょう。見ないのが一番かな。
      いい加減なことを言っていると視聴率が落ちる、というのが一番効果的でしょうけど、難しいですね。

  • 国家・国民の思考様式が"緊縮財政"に覆われているのが一番厄介な問題ではないでしょうか。

    水道が使えない。
    有事の際、水の供給場所が失われるわけですから、助からない人達が続出します。

    対立を煽るわけではありませんが、貨幣観の相違は、独立不羈の精神を持った人達と特定のイデオロギーにしがみつく従属的な精神を持った人達との対立のように思います。

    あとは、上にも書きました「有事」について、どう考えているか?
    ここまで来ますと、腹の探り合いになりますが。

    • そうです。財源はある。このことだけで大きく政策が変わります。

  • QC手法では真の原因を追及するために、よく「なぜを6回繰り返す」ことがやられます。今回の水道橋落下のような個別具体的な事件の原因を追及していくと、面白いほど、真の原因は「PB黒字化目標があるから」というところに行き着きます。ISO9000の品質管理に従うと、是正処置というのは、真の原因の追及、原因の排除、遡及処置がセットになったものです。
    例えば、次のような特性要因図ができる。①なぜ水道橋が落ちたか → 耐用年数以内にメンテナンスがやられていなかった。 ②なぜメンテナンスがやられなかったのか。 → メンテ要員がいないため。 ③なぜ要員がいないのか。 → 予算が削られ、水道橋はまだ持つと考えたので、メンテ要員を削った。査定額が低く、落札した外注業者がなかったため放置された。 ④なぜ予算が削られたのか。 → 国からの地方交付税が削減されたから。 ⑤なぜ交付税が削減されたのか。 → PB黒字化目標があるから。 ④’なぜ水道橋がまだ持つと考えたのか。 → 安全係数をかけて設計されているし、耐用年数過ぎて直ぐ壊れるものでないから、メンテのルールを無視した。 ⑤’なぜルール無視したのか。 → 教育の不徹底。 ⑥なぜ教育が徹底されなかったのか。 → 要員不足で教育・研修ができない。 →④へ。 ④''なぜ査定額が低いのか。 →④へ。
    上記では簡単のため、原因を少なく絞って記述したが、一般的には原因は複数あり、それぞれについて「なぜ」を繰り返す。そうやったとしても最終的には、PB黒字化目標が諸悪の原因であることに行き着くと思います。そのような手法を使って、一般人に分かりやすい表現をすると理解されるということはないだろうか。
    多くの事故については、メディアを含めて、世の中一般には原因の追及が甘く、途中の原因で終えてしまっていて、例えば、上の例では、ルール違反をしないよう教育を徹底します。等と、それはそれで大事ではあるが、筋違いな対策で終わってしまっていることが多いと思います。
    最後は、なぜPB黒字化目標があるのか、というのが実に不思議なことで、真の原因が見つけられずにおります。

    • PB黒字化目標がなぜ存在するのか。
      これは単なる勘違い、思い込みだと思います。
      借金は悪。これは疑う余地のない当然のこと。
      こういう回答をしている国会議員もいます。
      そう理解するのが普通なのです。

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