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賃上げ促進税制で賃上げはできない

来年度の税制改正に、賃上げ促進税制が入ってくるようです。

本当に効果があるのか

この税制が、本当に日本人の賃上げに効果があるのかどうか、検証してみましょう。

まず、賃上げしたらその分利益が減るので、企業は節税になります。ここでさらに税額控除までする必要があるのか、疑問が残ります。

さらに、コロナで疲弊している企業は賃上げする余力はありません。雇用維持で精いっぱいな企業も多いでしょう。そのような企業に「賃上げしたら税金負けてあげる」と言っても、そもそも赤字で法人税を払っていないので、何もメリットはありません。

そして、コロナ禍に襲われず、あるいはコロナで業績好調になった企業は、賃上げを行ってさらに良い人材を集めようとするかもしれません。

コロナ禍に見舞われた企業にとっては泣きっ面に蜂となる

そうなると、コロナ禍に襲われて立ち直ろうとする企業は賃上げできないので人材獲得競争でもコロナ禍に襲われなかった企業に負けてしまい、人手不足となり、さらにコロナ禍から立ち直るのが困難になるでしょう。

この税制は、賃上げには一部しか寄与せず、一部の成功した企業だけが恩恵を受け、多くのコロナ禍で打撃を受けた企業にとってはマイナスにしかならず、日本全国で見ても悪い影響しか与えないのではないでしょうか。

そんなことを動画でもお話しています。ぜひチャンネル登録と高評価をお願いいたします。

あんどう 裕(ひろし)

慶應義塾大学経済学部卒、大手鉄道会社入社。平成9年税理士試験合格。平成10年独立し安藤裕税理士事務所を開設。平成24年12月衆議院議員総選挙により初当選。以後3期連続当選。議員連盟「 #日本の未来を考える勉強会 」前会長。税理士。

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  • 当の企業が理解していないという話もありますよ(苦笑い)。

    「コロナ禍初期の頃の最初の緊急事態宣言の時の社内での100%補償の時は凄かった。まさか、100%もらえるとは思ってもみなかった」って未だに言ってますからね。周りは。

    それと、「価値抜き取り資本主義」と「競技スポーツ型資本主義」が横行しますね。
    つまり、勝ち負けにしか興味がなく、自分または自分達が考えた(あるいは生み出した)商品が「絶対に正しい(あるいは絶対にいい)」という「ファンタジー」に基づいた競技スポーツ的発想で強引にでも力をつけてくるでしょう。
    まるで"群雄割拠した戦国時代"を望んでいるかのように。

  • ふと気になりました。お目通し頂ければ幸いです。あちこちで言われている、法人税を上げたら節税のために人件費に充てるというのは本当でしょうか。税率を上げられても値上げや費用削減等にてできるだけ従来と同じ額で税引き後利益を維持しようとし、そうすべく人件費削減等が為されてしまうとそれこそ所得・消費が縮小しかねない気が。企業は利益を追い求める団体であり、故意に利益を減らす様なことを借入先や出資者が納得するのでしょうか。もちろん消費税減税は賛成ですが、法人税を上げた場合、上記みたいにうまくいくのでしょうか。

    • ありがとうございます。法人税を上げたら節税のために人件費に充てる、というのは基本的にはありません。ただし、決算時に業績のいい会社は「税金払うくらいなら、従業員に還元する」といって決算賞与を出すところはあります。
      ただ、法人税下げの議論のときには、減税論者は「法人税下げたら、その分が給料など人件費に回る」と言っていました。そんなことはあり得ないのに。
      法人税上げたら節税対策で人件費を上げる、おいうことは基本的にはありません。
      法人税下げの議論のときに、法人税下げたら人件費に回ると言ってたのが嘘であることが明らかになった、ということを言いたいのです。

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