やっと、という感じですが、日経新聞にコロナによる飲食店の閉店が報道されています。
当然の結果ですが、このことについて、きちんと報道してきたマスコミはあったのでしょうか?
よくある意見が「休業に対する補償は必要だ。だが、ゾンビ企業を救済してはいけない。きめ細かい支援が必要だ。予算にも限りがある。」というものです。
これは全く的外れな意見です。しかし、実際はこの意見に基づいてコロナ支援の政策が決定されていきました。
コロナ禍においては、ゾンビだなんだと分類する以前に、すべての企業を救済しなくてはなりませんでした。一社でも倒産・廃業させてしまえば、日本の国全体が持っている供給能力が損なわれ、コロナ後のV字回復が不可能になるからです。
仮にゾンビ企業が存在していたとしても、ゾンビ企業も生産活動を行っており、そこで働いている従業員がいます。その人たちの雇用を守り、コロナが終わった後の生産活動ができる体制を維持してもらうことが最優先課題なのです。
たとえゾンビ企業であっても、生産能力と雇用がある限り、コロナ禍においては守らなければならなかったのです。
しかし、そもそも、ゾンビ企業はなぜゾンビ企業として生きながらえているのか。
それは、デフレで不景気が継続し、失業率が高く雇用情勢が買い手市場なために社員も会社にしがみつき、ゾンビ企業が生き残ってしまうのです。
ゾンビ企業が誕生するプロセスはこうです。
まず、不景気になります。
不景気になれば、企業は経営が苦しくなるので、賃金カットやあらゆるコストカットを断行します。それでますます国の消費が落ち込み、景気が悪くなります。企業は運転資金がなくなっていくので、運転資金の借り入れを銀行に要請して借入金が膨らんでいきます。
銀行は返済が滞るなどの不良債権を出したくないので、できるだけ企業の支援をして延命してもらおうと企業の経営を支援します。
社員も、会社の業績が悪いことはわかっていますが、辞めたところで不景気なので次の職場が見つかるかどうかもわかりません。自然と会社に居続けることを選択します。
この状況では、企業も倒産させられないし、倒産させたら失業者が出ることとなり、さらに経済全体が悪化します。
仮に好景気のときにある会社の企業業績が悪化した場合、当然その企業はコストカットや賃金カットを行うでしょう。
そうなると、社員が会社の先行きに不安を覚え、自ら転職を志望します。景気がいいので、求人も多々あり、いつでも転職できる状況が整っています。自然と仕事に自信のある社員は業績や待遇のいい企業に転職していきます。
社員が転職してしまうと、企業は経営が継続できなくなるので、廃業や倒産せざるを得なくなります。自然とゾンビ企業は淘汰されていくのです。
ゾンビ企業が誕生する最大の要因は、不景気による人余りです。
銀行が融資するからゾンビ企業が誕生するのではありません。
日本社会からゾンビ企業を退場させる最善の策は、デフレから脱却して好景気を作り出すことなのです。景気がよくなれば、待遇の悪い企業からは社員が離れていき、自然と経営の継続ができなくなります。
この解決策を考えず、「ゾンビ企業は淘汰されるべき」というような精神論を語っていては、いつまでもデフレ脱却はできないでしょう。