食糧危機は目前に来ている?

 気が付きませんでしたが、豆腐が値上がりしているようです。

空気を運ぶ船~豆腐 値上がりの裏で~

 日本の食糧自給率は37%程度と言われていますが、その中でも大豆はほとんどが輸入に頼っています。

大豆の自給率は、なんと7%。食品用に限れば25%ということですが、それにしても低いです。

 主たる輸入先は米国ですが、米国の大規模省力化の進んだ大量生産の大豆とは、価格競争力で太刀打ちできず、日本の大豆生産能力は弱体化していきました。

日本の国土は農業競争力においては絶望的に不利

 日本のように国土が狭く、急峻な山と海の間に狭い平地があるような土地柄では大規模で機械化された農業を営むのは不可能です。米国のような大平野のある国と比べると、絶望的に競争条件が不利なのです。

 しかし、そのように不利な競争条件であるにもかかわらず、ハンデキャップなしで平等な競争を強いられてきたのが我が国の農業です。横綱と幕下で戦っているようなもの。これでは衰退していくのは当然なのです。

食料は輸入すればいいのか?

 その結果、農業では十分な所得が得られないので農業就業者は減る一方で、食糧自給率は低下の一途をたどりました。それでも有識者の中には「食料は外国から買えばいい」と発言する人もいます。

 しかし、今回紹介した記事にもある通り、運搬するための手段が経済的な競争原理のもとに確保できない、ということが現実に発生しています。

食糧自給率の低さは致命的弱点

 食糧自給率が低い、ということは、実は国にとって致命的な弱点になります。どんなにコンテナ料金が高くなろうとも、最後にはどんなに高い金額を払ってでもコンテナを確保し、食糧を輸入しなくてはなりません。

 そうしなければ、国民が餓死してしまうからです。

 今回のコンテナ不足は、まだ一時的な現象で収まるでしょう。米国の大豆農家も、得意先である日本への輸出があまりにも滞れば、米国政府に対して、輸出の停滞を解消するよう強力に働きかけをするでしょう。したがって、いまのところは大丈夫です。

来年も輸入できるとは限らない

 しかし、一度このようなことが発生すると、米国の大豆生産農家は、来年以降の作付けを躊躇するようになるかもしれません。

生産農家は、このような輸出リスクのない国との契約に切り替えたり、リスクのない作物に作るものを変更するかもしれません。

 あるいは、高額な保険に入ることを発注者に要求してそのコストを価格に転嫁するかもしれません。

 私たちが毎日のように食べている大豆を原料とする食料品は、今年すでにこのような状態にあったのです。

食糧自給率確保への転換が必要

 いまからでも日本の農政は、食糧自給率の確保に大きく舵を切り替える必要があります。輸出を奨励している場合ではないのです。

 輸出の前に、国民の生命を国内生産の農産物で維持するための農業を奨励してなくてなりません。つまり目指すべきは食糧自給率の向上です。

 輸出を奨励する農政は、いつも平時で有事は起きない、というお花畑のなかで暮らしている人たちの夢物語なのです。

 もっと有事を想定し、地に足をつけた農業政策を実行しなくてなりません。

 そのためにも、農業に対する政府支出の拡大が求められます。

 農業者に対して補助金を増やし、食糧自給率を上げるのは、農業者という既得権益者を守るためではありません。

農業保護によって守られるのは日本人の安心安全な食生活

 食料を安定的に確保され、安心安全な食生活を送るという既得権を享受するのは、ほかでもない日本国民全員です。農業に対して補助金を出し、農業を守り、食糧自給率を上げることによって守られる既得権益を享受するのは、日本国民なのです。

 そこを勘違いして「農業は守られすぎだ」とか「既得権だ」などと批判するのは、事態の本質を見誤っています。

国民生活を守るための予算を敵視して削減してきたのが平成時代の「改革」

 国民生活を守るための予算を敵視して削減してきたのが、平成の時代の改革でした。

『既得権を打ち壊せ。無駄遣いを削減しろ。補助金を減らせ。自由競争だ。輸出を伸ばせ。』

 そんなことばかり実行され、国民の所得は減り、食糧自給率は低下し、耕作放棄地は増える一方になりました。

 その結果、日本国民の食糧安全保障という安心安全な生活を守る基盤は破壊されつつあり、国民の生命が脅かされる事態となっているのです。

 このような「完全に間違った政策」から大転換を図らなくてはなりません。

5件のコメント

食糧自給率を上げなければならないということには賛成です。食糧安全保障のためには、自給率は何%ぐらい必要なのでしょうか。もちろん品目によって異なると思いますが、どのような目標を設定できるのでしょうか。その目標値が決められれば、その目標値になるまで政府は農家に補助金を出せば言い訳です。TPPや二国間協定との関連はどうなるのでしょうか。

適正な自給率がどのくらいかは私にもわかりません。しかし、穀物や肉類、野菜類はかなりですから、これを引き上げることは必要です。
TPPからは農産物は除外、そして二国間協定でも自国の農業を守るという原則を維持して交渉するべきです。

ありがとうございます。なかなか骨の折れる仕事になりそうですね。

食糧自給率より、食品ロスの方が割合が、多いと思いますが、どうお考えでしょうか。

ありがとうございます。食品ロスもそうですが、自給率が低すぎるのは問題です。両方とも手をつけるべき問題と考えます。食品ロスを無くしつつ、輸入に頼らないで自国内での農産物の生産を高める努力が必要でしょう。もちろん、食品ロスがなくなれば、その分輸入は減らせますし、国内で生産する農産物の量も少なくて済みます。

菅原康行 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Sorry!日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ABOUT US
アバター
あんどう 裕(ひろし)前・衆議院議員
慶應義塾大学経済学部卒、大手鉄道会社入社。平成9年税理士試験合格。平成10年独立し安藤裕税理士事務所を開設。平成24年12月衆議院議員総選挙により初当選。以後3期連続当選。議員連盟「 #日本の未来を考える勉強会 」前会長。税理士。